1988年より本田技術研究所の欧州のR&Dセンターとしてドイツ・オッフェンバッハ市に拠点を構えるHonda R&D Europe (Deutschland) GmbH。今年11月に最新のドライビングシミュレータが導入された「バーチャルテストセンター」のオープンをきっかけに、Honda R&D Europe (Deutschland) GmbH副社長の奥 康徳氏にお話を伺いました。
本田技術研究所の欧州拠点
-Honda R&D Europe (Deutschland) GmbHの欧州の位置づけや役割は何でしょうか。
Hondaの欧州のR&D拠点は、主にドイツ、イギリス、イタリアにあります。イギリスは四輪、イタリアは二輪を担当していますが、ここドイツでは四輪/二輪/パワープロダクツといったHondaの主要事業全てのR&Dを担当しています。
Honda基本の理念をドイツでも
-ドイツのHonda R&Dは、どのような職場環境でしょうか。日本の文化や御社独自のコーポレート文化があるとしたら、どのように浸透させていますか。
「三つの喜び」は、“買う喜び”、“売る喜び”、“創る喜び”で、弊社は研究所として、特にお客様の暮らしと社会を豊かにするための商品やサービスを創造し、提供していくことに喜びを感じることを大切にしています。
その根底にあるのは、個々の“自立”、“平等”、“信頼”の三つの柱からなる「人間尊重」の考え方です。
このフィロソフィーは、ここドイツにおいてもしっかり浸透していると感じています。弊社はR&Dの会社ですので、社会や人のニーズに先駆けて、新価値を創造することに重きを置いています。社内の上下関係にとらわれず、自由闊達な議論や新しいアイデアの提案が活発に行われています。
ドイツには名だたる自動車メーカーがいくつもあり、日本に比べて転職が多いと聞きますが、 Hondaのような企業文化は珍しいのか、優秀なエンジニアが長きにわたって、弊社で活躍してくれています。
-御社のフィロソフィーが上手く現地に融合して、風通しの良い職場の雰囲気が伝わってきますね。御社のフィロソフィーは最初からドイツの従業員の方にもすんなりと受け入れられたのでしょうか。それとも具体的な手法をとってこられたのでしょうか。
さらに、ここドイツでは多様な人が平等に働いています。最近嬉しかったのは、マネージメントレベルと現場が近いことが有難い、と現地のスタッフに言われたことです。
-なるほど、自立・平等のフィロソフィーがドイツ人メンタリティーによく合い、三つの柱の三本目となる信頼が、その上に生まれている様子がよくわかりました。そのような背景があったからこそ、今回のバーチャルテストセンター開設の実現に至ったのではと想像しております。
“人”が中心の研究―最新設備導入の背景
-そこで少し、バーチャルテストセンターについてお伺いします。今回の新しいドライビングシミュレータの導入には、どのようなねらいがあったのでしょうか。
そのために、最新のドライビングシミュレータを導入し、この分野で世界最先端のドイツで、“人”を中心に据えた研究を加速したいと考えています。
-今回導入された設備はどのような点で、新しいのでしょうか。また、どのような結果が期待されていますか?
これにより、安全かつ再現性の高いテストが可能になりますので、操縦安定性だけでなく、ヒューマンマシンインターフェースや、将来の自動運転技術の研究に、ドライビングシミュレータを活用していく予定です。
新しい機能や技術をお客様に提供し、喜んでいただくためには、 ”人“の感性に訴える魅力や使い勝手の良さが、ますます重要になってきており、我々は “人”をもっと研究し理解する必要があると考えています。
そのために今まで積み重ねた経験や既存のやり方に頼るだけでなく、新しいアプローチが必要だと思います。ドライビングシミュレータはその研究を加速するための強力な武器であり、この武器を使いこなしている者同士が切磋琢磨する環境が欧州、特にドイツにあります。弊社もここドイツで切磋琢磨し、このバーチャルテストセンターで生み出す価値や技術で、欧州だけでなくグローバルなHondaのビジネスに貢献していきたいと考えています。