ヘッセン州イノベーションコングレス2018レポート

ヘッセン州貿易投資公社(Hessen Trade and Invest)のイノベーション部門”Technologieland Hessen”によるこのコングレスは、ヘッセン州出身の発明家、フィリップ・ライス(1834-1874年)のバイオグラフィーの映像とともに、スタートしました。

ライスは、電話の祖として知られているものの、その彼が発明した電話のプロトタイプをさらに開発し15年後には特許まで取り商業化したグラハム・ベルの影に隠れてしまい、ベルの方が有名になってしまいました。

「ライスとベルの違いは何だったのか?」

きちんとしたアドバイスや専門的なサポートやネットワークがないとどうなるのか?と、警鐘をならしています。

11月15日にフランクフルト市内にて行われたこのコングレスは、前回に続き2回目の開催。基調講演、パネルディスカッション、テーマごとのプレゼンテーション、イノベーション製品の展示、コーチングスペース、ネットワーキングエリアで主に構成されています。なんと前回の2倍以上の1300名を超えるイベント申込者数を記録しました。

今回初開催の「INNOVATION GAME」では、会場の若者達と台北大学の学生達とがオンライン中継で、イノベーションを起こすための戦略を競い合っていました。
また、会場の一画ではエレベーターピッチのスペースが設けられ、5分の間に様々なビジネスアイディアや考え方が紹介されていました。テーマはサイバーセキュリティ、ライフサイエンス分野からデザインシンキングなどイノベーションを起こすための考え方まで色々。総じて受けた印象としては、もはやイノベーションのトレンドは世界共通となりつつあるようです。

スタートアップと大企業のタイアップが鍵

オープニングでBaltes教授が「イノベーションはスタートアップ企業のみによってもたらされるわけではない、デジタル化はスタートアップ企業と既存の企業とがお互いに手をとりあうべきだ」とも述べています。

パネルディスカッションの様子

パネルディスカッションでもそのことが議論されています。例えば、大きな企業の新しいマネジメント手法として、チームの働き方をスタートアップ企業の様にしてみたり、逆にスタートアップ企業はどのように”タンカー(のような大きな船)”になれたのかを大手企業から学べるかもしれない。スタートアップ企業の代表としてのパネリスト、Meshcloud社 のKraus氏も”大企業はスタートアップ企業から新しいことに挑戦するモチベーションを得られる”だろうと述べています。


ヘッセン州マスコット「レオ」。ゆるキャラ?
ヘッセン州議会のマスコットキャラクター「レオ」も参加していました。”ゆるキャラ”という言葉がドイツ語にあるかは筆者は把握しておりませんが、会場の雰囲気に一役買っていました。

続いてプレゼンテーションでは自動車部品大手のシェフラー社、こちらも特殊化学品の大手エボニックがどのようにイノベーションを起こし続けているのかその秘訣を公開。「破壊的イノベーションは脅威となってしまうのか!?」というジレンマに対してうまくシステムを作っているように見受けられました。

ヘッセン州のイノベーションの為の助成制度も紹介されていました。色々なフレームワークによって、フィリップ・ライスの二の舞にはならない事でしょう。

ドイツと社会構造の似ている日本でもイノベーションの創出が課題となっています。
今回のコングレスのモットーでもある「Alles bleibt neu」(直訳:すべては新しいまま」は、既存・新出の産業に関わらず、すべてがイノベーティブであり続ける、というメッセージが一貫して感じられるコングレスとなった印象です。伝統を重んじるドイツ人ならではの視点かもしれません。